個別支援計画書の「本人・保護者の意向」欄は、計画全体の出発点です。ところが実際には「特になし」「楽しく通いたい」といった短い一文で終わってしまい、目標とのつながりが見えない計画書も少なくありません。この記事では、児発管や計画づくりに関わる職員の方に向けて、意向欄の書き方と聞き取りのコツを文例つきで整理します。
この記事の結論 本人・保護者の意向は、「どうなってほしいか(願い)」と「いま何に困っているか(困りごと)」を、できるだけ本人や保護者の言葉のまま書きます。本人が言葉で伝えにくい場合は、好きなことや表情・行動から読み取った意向を、根拠とともに書きます。意向と長期目標がつながっていることが、よい計画書の条件です。
意向欄には何を書く?
意向欄には、本人と保護者それぞれの「願い」と「困りごと」を書きます。支援者の考えではなく、本人・保護者の思いを記録する欄だという点が大切です。
| 書く内容 | 例 |
|---|---|
| 本人の願い | 「友だちとサッカーがしたい」「ひとりで電車に乗れるようになりたい」 |
| 本人の困りごと | 「大きな音がするとこわい」「宿題がわからないとイライラする」 |
| 保護者の願い | 「自分の気持ちを言葉で伝えられるようになってほしい」 |
| 保護者の困りごと | 「朝の支度に時間がかかり、毎朝叱ってしまう」 |
意向は、支援の方向性を決める根拠になります。計画の長期目標や支援内容を読んだときに、「この目標は、意向欄のこの願いから来ている」と分かる状態を目指しましょう。計画書全体の構成は個別支援計画書の書き方で整理しています。
本人の意向はどう聞き取る?
本人の意向は、年齢や発達の状況に合わせて聞き方を変えます。「どうなりたい?」と抽象的に聞くより、具体的な場面や好きなことから入るほうが答えやすくなります。
質問の例
- 「ここで一番好きな遊びは何?」
- 「最近、楽しかったことは?」
- 「いやだなと思うのはどんなとき?」
- 「できるようになりたいことはある?」
- 「(中高生に)学校を卒業したら、どんなことをしてみたい?」
言葉で伝えにくい場合
話しことばでのやりとりが難しい場合も、意向欄を空欄にしたり「特になし」と書いたりするのは避けます。次のような方法で読み取った意向を書きます。
- 絵カードや写真を使って選んでもらう
- 好きな活動・苦手な活動を、日々の記録から整理する
- 表情や行動(近づく、手を伸ばす、離れる)から読み取る
- 保護者や、よく関わる職員の見立てを聞く
このとき、「どのように読み取ったか」も一緒に書くと、読み手に根拠が伝わります。
保護者の意向はどう聞き取る?
保護者の意向は、面談で直接聞くのが基本です。ただ、面談の場ではうまく言葉にならないことも多いため、事前にアンケートで書いてもらうと、面談では内容を深めることに時間を使えます。
聞き取りのコツは次の3つです。
- 良くなったことから聞く:成長を共有すると、困りごとも話しやすくなります。
- 困りごとは場面で聞く:「いつ・どこで・どんなときに」を確認します。
- 期間を区切って聞く:「半年後、どんな姿になっていたらうれしいですか」と聞くと、計画の期間に合った願いが出てきます。
保護者の願いが「普通の学校に行ってほしい」のように大きい場合も、否定せずに受け止めます。そのうえで「そのために、いま家で一番困っていることは何ですか」と聞くと、半年で取り組める具体的な願いに近づきます。
意向欄の文例
児童発達支援(未就学児)
- 本人:「(絵カードで)すべり台とブロック遊びを選ぶことが多い。好きな遊びを大人と一緒に楽しみたい様子がみられる。」
- 保護者:「言葉が増えて、してほしいことを伝えられるようになってほしい。今は思い通りにならないと泣いて怒ることが多く、対応に困っている。」
放課後等デイサービス(小学生)
- 本人:「友だちとドッジボールがしたい。負けるといやな気持ちになる。」
- 保護者:「負けたときに気持ちを切り替えられるようになってほしい。学校でもトラブルになることがあり心配している。」
放課後等デイサービス(中高生)
- 本人:「卒業したら働きたい。お金の計算を練習したい。」
- 保護者:「身の回りのことを自分でできるようになり、将来ひとりで暮らせる力をつけてほしい。」
本人が言葉で伝えにくい場合
- 本人:「音楽が流れると笑顔になり、自分から楽器に手を伸ばす。大きな声が続く場面では耳をふさいでその場を離れる。静かな環境で、好きな音楽の活動を楽しみたいと思われる(活動中の様子と保護者の見立てから)。」
意向を目標につなげるには?
意向を目標につなげるには、「願い」を半年で到達できる行動に言いかえます。意向をそのまま目標に書き写すのではなく、次の順で絞り込みます。
- 本人・保護者の願いを確認する
- 願いに近づくために、いま一番取り組みたい課題を選ぶ
- その課題を、評価できる行動の目標にする
例:保護者の願い「負けたときに気持ちを切り替えられるようになってほしい」 → 長期目標「ゲームで負けても、気持ちを切り替えて活動に戻れる」 → 短期目標「負けたときに、深呼吸やクールダウンの場所を使って、5分以内に活動に戻れる」
このように意向と目標がつながっていると、保護者への説明もしやすく、モニタリングで「願いにどこまで近づいたか」を振り返ることもできます。
よくある質問
本人の意向が「特になし」の場合はどう書けばよいですか?
「特になし」とそのまま書くのは避け、好きな遊びや活動中の様子から読み取れる意向を書きます。たとえば「ブロック遊びに長く集中しており、好きな遊びを続けたい様子がみられる」のように、観察した事実と読み取った意向をセットで書くと、根拠のある記載になります。
本人と保護者の意向が違う場合はどうしますか?
両方をそのまま書き分けます。たとえば本人は「ゲームをしたい」、保護者は「宿題をしてほしい」という場合、どちらかを消すのではなく、両方の思いを踏まえて「宿題を終えてから好きな活動を楽しめる」のような目標を検討します。意向の違いは、面談で共有して話し合う材料にもなります。
保護者の意向は、保護者の言葉どおりに書く必要がありますか?
できるだけ保護者の言葉を生かして書くのが基本です。ただし、長い話をそのまま書くと要点が伝わりにくいため、意味を変えない範囲で要約します。要約した場合は、面談の最後に「こういう願いとして書いてよいですか」と確認しておくと安心です。
意向は毎回聞き直す必要がありますか?
計画を見直すたびに聞き直します。子どもの成長や生活の変化によって、願いや困りごとは変わっていくためです。前回の意向と並べて「何が変わったか」を確認すると、次の計画の方向性が見えやすくなります。
まとめ
本人・保護者の意向欄には、願いと困りごとを、できるだけ本人・保護者の言葉で書きます。本人が言葉で伝えにくい場合も空欄にせず、観察や保護者の見立てから読み取った意向を根拠とともに書きましょう。意向と長期目標がつながっていることが、伝わる計画書の条件です。
つむぎあいでは、保護者アンケートをURLひとつで集められ、その内容が計画書に反映されます。面談前に家庭での様子や願いを把握しておくことで、意向欄と目標づくりにしっかり時間を使えます。
